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デモザイク(ベイヤー配列)
- RAWと露出
- Demosaicing
- 別名: ベイヤー配列
- 別名: カラーフィルタアレイ
- 別名: CFA補間
センサーの各画素が測れるのは赤・緑・青のうち1色だけで、残りは周囲から推定して埋められています。この推定処理をデモザイクと呼びます。配列の設計は1976年の特許まで遡れますが、どう埋めるかのアルゴリズムは今も一つに定まっていません。
図で見る
この操作が画像に何をするか
センサーの各画素の上には、赤・緑・青のいずれか1種類のカラーフィルタしか載っていません。つまり1画素が記録するのは1色分の光量だけです。最終的な画像は1画素あたりRGB3つの値を持つので、足りない2色は周囲の画素から推定して埋められます。これがデモザイクで、画像の色情報の大部分は測定値ではなく計算値です。推定である以上、細かい繰り返し模様では実在しない色(偽色)やモアレが現れることがあります。
効く場面
- 細かい繰り返し模様(布地・建築のルーバー・網目)で偽色やモアレが出たとき、原因の所在を切り分けるため
- 同じ RAW を別の現像ソフトで開いたときに、細部の描写だけが違う理由を確かめたいとき
- 解像感を最優先する撮影で、ローパスフィルターの有無という設計差を理解しておきたいとき
つまずきやすい点
- RAW には各画素にフルカラーが記録されていると考える(実際は1画素1色)
- ピクセル等倍で見える細部を、すべて実測された情報だと考える
- 偽色やモアレをレンズやピント精度の問題だと考えて、原因を取り違える
- ローパスフィルターを外した機種を無条件に高画質だと考える(モアレ・偽色とのトレードオフ)
どこまで裏が取れているか
この項目についてよく言われることを、出典に当たって確かめた結果です。出典が見つからなかったものは、見つからなかったと書いています。
- 原典で確認できる ベイヤー配列では、カラーフィルタが各受光素子と1対1で重なっており、1画素は1つの波長帯しか記録しない 一次資料(特許明細書の請求項)。請求項が「フィルタ素子が受光素子と1対1で重なる(one-to-one registry)」と規定しており、1つの受光素子に1種類のフィルタしか載らないことが構造上導かれる。ただし特許は「この配列でカラー撮像する装置」を主張する文書であって、現行のデジタルカメラがこの特許の実施であることを示す文書ではない。現行機がベイヤー配列であること自体はメーカーの啓発記事で確認できるにとどまる。 出典: US Patent 3,971,065「Color imaging array」(Bryce E. Bayer / Eastman Kodak, 1976), Claim 4
- 原典で確認できる 緑(輝度)素子が1つおきに配置されるのは、人間の視覚が輝度・緑に最も敏感だという設計判断による 一次資料(特許明細書)。請求項1が「輝度型素子が直交2方向で1つおきに現れる」と規定し、請求項2がその輝度型素子を緑域に感度を持つものと特定している。ただし「青は最も少なくサンプリングされる」という明細書本文の記述は FIG.6 の別実施例(緑1/2・赤3/8・青1/8)についてのもので、現在普及している RGGB(緑1/2・赤1/4・青1/4)では赤と青は同数である。「緑が半分」は両方に共通するが、「赤より青が少ない」は現行機には当てはまらない。この区別をせずに特許を引く二次資料が多い。 出典: US Patent 3,971,065「Color imaging array」Claim 1・Claim 2 および明細書本文
- 原典で確認できる 各色チャンネルは大半が欠損しており、デモザイクはそれを周囲から推定して埋める処理である RawPedia は RawTherapee 公式ドキュメント(wiki 形式)であって規格ではない。established としたのは、ここで挙げられている欠損割合(緑1/2、赤・青3/4)が特許の定める配列から算術的に導ける値であり、かつ補間処理の実装が GPL で公開されているため。文書の記述をソースコードで裏づけられる点が、アルゴリズム非公開の商用ソフトとの決定的な違いである。 出典: RawPedia(RawTherapee 公式ドキュメント)「Demosaicing」
- 原典で確認できる 光学ローパスフィルター(OLPF)はモアレ・偽色を抑える代わりに解像感を落とすトレードオフであり、これを外した機種が実際に製品化されている 自社製品の設計についてのメーカー公式の記述なので、その部分は一次情報として established とした。ただしこれはニコンが自社の D800(OLPFあり)/D800E(OLPFの効果を除去)という2機種について述べたものであり、他社機に OLPF があるか・その効果がどの程度かには一般化できない。「トレードオフは画像がわずかに軟らかくなること」という評価もニコン自身のもので、第三者の測定ではない。同ページのモアレ発生メカニズムの一般的な解説部分は啓発記事であり、それ単体なら secondary_only 相当。 出典: Nikon USA, Learn & Explore「Moiré and False Color」
- 原典で確認できる デモザイクのアルゴリズムは一つに定まっておらず、オープンソースの現像ソフト1本の中だけでも十数種類の実装が並存している established の射程は「複数の実装がソースツリーに実在する」という、第三者が同じ手順で再確認できる事実に限る。GitHub Contents API で rtengine 直下を列挙し、amaze / rcd / lmmse / vng4 / ahd / eahd / hphd / bilinear / xtrans / dual の各デモザイク実装ファイルが実在することを確認した。「選択によって結果が視覚的に有意に変わる」は RawPedia の記述であって測定ではなく、その部分だけなら secondary_only 相当。RawPedia が示すアルゴリズムの優劣評価も測定ではないため採用していない。またこれは RawTherapee の話で、Adobe Camera Raw / Lightroom がどのアルゴリズムを使っているかは公開されておらず、本調査でも該当文書を見つけられなかった。 出典: RawTherapee ソースツリー rtengine/(GitHub)
他の項目の主張とあわせて確かめたい場合は根拠の強さで見るもご覧ください。
関連する現像の項目
- RAWとJPEGは何が違うのか — JPEG が情報を捨てるのは規格そのものにそう定義されているからで、ここは議論の余地がありません。一方「RAW は劣化しない生データ」という説明のほうは、メーカー自身の取扱説明書と突き合わせると、そのままでは成り立たない場面があります。
- シャープネス — デジタルのシャープネス処理の標準はアンシャープマスク(USM)で、元画像から「ぼかした複製」を差し引いてエッジ付近のコントラストを持ち上げる線形演算である。ぼけて失われた情報を復元しているのではなく、エッジの見え方を強調しているだけなので、やりすぎるとエッジに沿って明暗の縁(ハロー)が出る。「シャープネスは最後にかける」という定石は、実験の結果ではなく業界のワークフロー指針に由来する。
- ノイズ除去 — 写真のノイズには、光が粒(光子)として届くこと自体から生じるショットノイズと、センサーの読み出し回路が加える読み出しノイズがある。前者は物理法則で決まり、どんなカメラでも避けられない。「ISO を上げるとノイズが増える」という言い方は、実測データを見ると少なくとも半分は誤解で、増感そのものよりも「取り込む光が少ないこと」が効いている。
- カメラプロファイルと「正しい色」 — RAW から色を出すには、センサーの生の値を CIE の測色値に対応づける必要があり、その対応づけを担うのがカメラプロファイルである。DNG 仕様書はこの構造を公開しており、プロファイルが複数の照明条件ごとの行列と、色相・彩度・明度の変換表、さらに「ユーザー調整の出発点」としての look テーブルからなることが読み取れる。つまり規格自身が、カメラプロファイルには測色的な変換だけでなく意図的な作り込みが含まれると認めている。ここまでは DNG 仕様書という一次資料で行単位まで確認できる。確認できないのはその先で、「メーカー純正ソフトのほうが色が正しい」という広く言われる主張については、「正しさ」の基準を定義した規格・一次資料を見つけられなかった。仕組みは公開資料で確定できるのに、その仕組みの良し悪しを判定する基準だけが見つからない、という構造になっている。