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ノイズ除去
- ディテールと補正
- Noise Reduction
- 別名: ノイズリダクション
- 別名: NR
- 別名: 輝度ノイズ
- 別名: カラーノイズ
写真のノイズには、光が粒(光子)として届くこと自体から生じるショットノイズと、センサーの読み出し回路が加える読み出しノイズがある。前者は物理法則で決まり、どんなカメラでも避けられない。「ISO を上げるとノイズが増える」という言い方は、実測データを見ると少なくとも半分は誤解で、増感そのものよりも「取り込む光が少ないこと」が効いている。
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この操作が画像に何をするか
ノイズ除去は、周囲の画素と比べて「ランダムに外れている」成分をならす処理である。だが画像処理の側から見ると、ランダムな揺らぎと、本物の細かい模様は、どちらも「隣と値が違う」という同じ形をしている。したがってノイズを削れば、細かいディテールも必ず一緒に削れる。ソフトが輝度ノイズとカラーノイズを別のスライダーに分けているのは、この2つが見え方も、削ったときの副作用もまったく違うためである。
効く場面
- 暗い場所で撮って、平坦な面(空、壁、影)にざらつきや色の斑点が出ているとき
- 色の斑点(カラーノイズ)だけが気になるとき。輝度ノイズより先に、こちらを削ったほうが副作用が小さい場合が多い
- 大きく引き伸ばして印刷する予定があり、等倍では気にならないざらつきが目立ちそうなとき
つまずきやすい点
- 輝度ノイズを削りすぎて、髪・布・木の葉のような細かい模様が溶けて、のっぺりしたプラスチックのような質感になる
- 「ISO を上げたからノイズが増えた」と考えて、増感そのものを避けようとする。実際には ISO を上げる場面は光が少ない場面であり、原因は増感ではなく光子の少なさである
- ノイズ除去とシャープネスを別々に強くかけて、消したざらつきを再び持ち上げてしまう
- AI ノイズ除去の結果を「復元された細部」として扱う。学習したモデルが尤もらしい模様を描いているのであって、その場所に本当にあった模様である保証はない
どこまで裏が取れているか
この項目についてよく言われることを、出典に当たって確かめた結果です。出典が見つからなかったものは、見つからなかったと書いています。
- 原典・実測で否定されている ISO 感度を上げるとノイズが増える 否定されるのは「ISO を上げること自体がノイズの原因である」という広く流通した因果の説明であって、高 ISO で撮った写真がノイジーに見えること自体ではない。何が誤りかというと、ISO 増感は撮像後の信号に掛けるゲインであり、EMVA 1288 の SNR 式では信号もノイズも同じ倍率で増えるためシステム全体のゲインは約分されて消える(規格は「量子化ノイズによる小さな効果を除けば、SNR は量子効率と電子換算の暗信号ノイズだけで決まる」と明記している)。さらに Photons to Photos の実測では、入力換算読み出しノイズは ISO を上げるほど下がる(Nikon D850 は ISO100 の 4.11 e⁻ が ISO400 で 1.48 e⁻。https://www.photonstophotos.net/Charts/RN_e.htm )。つまり同じ露光量なら ISO を上げたほうがノイズが少ない領域が実在する。では実際の原因は何かというと、ISO を上げる場面が「取り込む光が少ない場面」だからである。ショットノイズは光子数の平方根で決まるので、光が少なければ SNR は必ず下がる。ISO はその結果を表示しているだけで、原因ではない。限定条件として、EMVA 1288 は線形 RAW を前提とし、対象はマシンビジョン用カメラである。Photons to Photos は独立系測定者による機種あたり1個体の測定。また ISO 設定によって電子換算の読み出しノイズ自体は変わるので、「ISO はノイズと一切関係ない」わけでもない。 出典: EMVA Standard 1288 Release 4.0 Linear(2021-06-16)§2.6 Signal-to-Noise Ratio
- 原典で確認できる ショットノイズは光子(電子)の到来がポアソン分布に従うことから生じ、その分散は蓄積電子数の平均に等しい。読み出しノイズはこれとは別に、信号量に依存しない加算ノイズとして乗る 出典は EMVA(European Machine Vision Association)が発行する規格で、ショットノイズを「物理の基本法則で決まり、あらゆる種類のカメラで等しい」ポアソン分布(分散=蓄積電子数の平均)と定義し、読み出し回路由来のノイズを信号非依存の正規分布ノイズとして別に定義している。主張そのものが規格の本文である。ただしこの規格が対象とするのはマシンビジョン用カメラの特性評価であり、参照したのはセンサーが線形応答であることを前提とした線形モデル版。写真用カメラは JPEG 出力時に非線形処理が入るため、直接あてはまるのは RAW(線形データ)の領域である。PDF は PyMuPDF で本文抽出し、該当ページを目視で確認した。 出典: EMVA Standard 1288 Release 4.0 Linear(2021-06-16)§2.4 Noise Model
- 原典で確認できる 同じ露光量なら、増感(ゲイン)を上げること自体は SNR をほとんど変えない。SNR を決めるのは光子数と、電子数に換算した読み出しノイズである 規格は SNR の式を導いたうえで「量子化ノイズによる小さな効果を除けば、システム全体のゲイン K は約分されて消え、SNR は量子効率と電子換算の暗信号ノイズだけで決まる」と明記している。ISO 増感はこの K を変える操作なので、K が消えるということは増感そのものが SNR を決めていないということである。ただしこの結論は「電子換算の読み出しノイズが一定なら」という条件つきで、実際のカメラでは ISO 設定によってこれが変わる(次の主張を参照)。また EMVA 1288 は線形の RAW データを前提としている。重要な限定として、これは露光量(絞り・シャッター速度・被写体輝度)が同じ場合の話であり、実際の撮影で ISO を上げるのは露光量を減らすためなので、結果としてノイズが増えるのは事実である。両者を混同しないこと。 出典: EMVA Standard 1288 Release 4.0 Linear(2021-06-16)§2.6 Signal-to-Noise Ratio
- 実証はあるが条件が限定的 実測データでは、多くのカメラで ISO 設定を上げると入力換算読み出しノイズ(電子数)はむしろ減る established ではなく limited。測定は独立系の測定者 William J. Claff 氏個人によるもので、規格(EMVA 1288)に基づく第三者認証データではなく、機種ごとに1個体の測定である。ページ自身も「これらの生の値は面積で補正していないため機種間の比較には適さない」と断っている。掲載チャートに埋め込まれた系列データから、ページ内に定義された変換式(縦軸は log2 の電子数)に従って数値を復元した。復元値の例は Nikon D850 が ISO100 で 4.11 e⁻・ISO400 で 1.48 e⁻・ISO6400 で 1.11 e⁻、Sony α7 III が ISO400 で 4.99 e⁻・ISO636 で 1.44 e⁻、Canon EOS 2000D が ISO100 で 10.27 e⁻・ISO12800 で 1.05 e⁻。ISO 400 前後の段差はいわゆるデュアルゲイン(回路の切り替え)によるものだが、ページ自体がそう明言していないため原因については主張していない。 出典: Photons to Photos — Input-referred Read Noise versus ISO Setting
- 二次資料でしか確認できていない ノイズは「輝度ノイズ(ざらつき)」と「カラーノイズ(色の斑点)」に分けて扱われる Adobe が、ノイズを輝度(グレースケール)ノイズとカラー(色)ノイズに分類し、それぞれ別のスライダーで扱うことを明示している。ただしこれは分類と UI の説明であって、なぜ両者を分けるべきかの根拠は示されておらず、アルゴリズムも非公開のため secondary_only とした。本来の URL は https://helpx.adobe.com/camera-raw/using/sharpening-noise-reduction-camera-raw.html だが、本セッションの環境からは応答が得られなかった(TLS 接続は確立してリクエストも送信できるが、サーバ側が TLS 再ネゴシエーションを繰り返したまま本文を返さない。curl の2種類の TLS 実装と別経路の取得手段で計8回試行)。資料側の欠落ではなく環境側の問題なので、Internet Archive の 2020-12-25 保存版を取得して本文を確認した。オープンソース側では darktable も同じ区別を実装しており、公式マニュアルが luma(明るさ)ノイズと chroma(色)ノイズの両方に対応すると書いている(こちらは実際に取得して本文を確認)。なお「輝度ノイズよりカラーノイズのほうが目につきやすい」という広く言われる説明については、それを測定した出典を見つけられなかったので主張として立てていない。 出典: Adobe Camera Raw ヘルプ「シャープとノイズ軽減」(Internet Archive 2020-12-25 保存版)
- 二次資料でしか確認できていない Adobe の AI ノイズ除去(Denoise)は、デモザイクとノイズ除去を単一の機械学習モデルで同時に行い、Bayer / X-Trans のモザイク RAW にしか適用できない Camera Raw の開発チームが公式ブログで、Denoise がデモザイクとノイズ除去を1ステップで行うよう設計・学習されたモデルであること、対応形式が Bayer と X-Trans のモザイク RAW に限られること、高ノイズ/低ノイズの画像パッチを数百万組使って学習したことを明言している。Adobe 公式ブログだが、モデルの構造・学習データ・重みは公開されておらず「Adobe がそう説明している」以上のことは検証できないため secondary_only とした。記事は「大量のダークフレームを使った」とも書いているが規模や内容の数値は示されておらず、ショットノイズも「バケツで雨水を溜める」比喩で説明するだけでポアソン統計には触れていない。Adobe 公式ブログの本来の URL から直接取得し(HTTP 200、ページタイトル "Denoise Demystified | Adobe Blog")、引用した3箇所が本文に存在することを機械照合で確認した。 出典: Adobe ブログ「Denoise Demystified」
他の項目の主張とあわせて確かめたい場合は根拠の強さで見るもご覧ください。
関連する現像の項目
- シャープネス — デジタルのシャープネス処理の標準はアンシャープマスク(USM)で、元画像から「ぼかした複製」を差し引いてエッジ付近のコントラストを持ち上げる線形演算である。ぼけて失われた情報を復元しているのではなく、エッジの見え方を強調しているだけなので、やりすぎるとエッジに沿って明暗の縁(ハロー)が出る。「シャープネスは最後にかける」という定石は、実験の結果ではなく業界のワークフロー指針に由来する。
- 現像の順番 — 現像ソフトの処理は、利用者が操作した順ではなく、ソフトが決めた固定の順序(パイプライン)で実行される。そしてこれらの処理は数学的に可換ではないので、順序を入れ替えれば結果は変わる。一方で、雑誌や解説記事でよく見る「正しい現像手順」については、実験的な根拠を示した出典を見つけられなかった。
- デモザイク(ベイヤー配列) — センサーの各画素が測れるのは赤・緑・青のうち1色だけで、残りは周囲から推定して埋められています。この推定処理をデモザイクと呼びます。配列の設計は1976年の特許まで遡れますが、どう埋めるかのアルゴリズムは今も一つに定まっていません。
- 露出を右に寄せる(ETTR) — ETTR という言葉を広めたのは2003年の記事で、その根拠は「最も明るい1段に全階調の半分がある」という階調数の配分でした。しかし後年の実測はこの根拠そのものを否定しています。結論(白飛びしない範囲で右に寄せる)は概ね維持されますが、理由は階調数ではなく S/N 比です。
- ビット深度と階調 — 「14bit だから階調が滑らか」という説明は非常によく見かけますが、実測にもとづく検証はこれを支持していません。理由はノイズで、センサーのノイズが量子化のステップより大きいと、段差はノイズにかき消されて見えなくなります。ビット深度は単独では評価できず、S/N 比とセットでしか意味を持ちません。