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シャープネス
- ディテールと補正
- Sharpening
- 別名: アンシャープマスク
- 別名: USM
- 別名: 輪郭強調
デジタルのシャープネス処理の標準はアンシャープマスク(USM)で、元画像から「ぼかした複製」を差し引いてエッジ付近のコントラストを持ち上げる線形演算である。ぼけて失われた情報を復元しているのではなく、エッジの見え方を強調しているだけなので、やりすぎるとエッジに沿って明暗の縁(ハロー)が出る。「シャープネスは最後にかける」という定石は、実験の結果ではなく業界のワークフロー指針に由来する。
図で見る
この操作が画像に何をするか
アンシャープマスクは、名前に反して「ぼかし」を使う。元画像をガウスぼかしした複製を作り、それを元画像から引くと、なだらかな明暗(低周波)が打ち消され、エッジ付近の急な変化(高周波)だけが残る。この差分を元画像に足し戻すのがシャープネス処理である。結果としてエッジの暗い側はより暗く、明るい側はより明るくなり、境界の段差が誇張される。ぼけで混ざってしまった細部そのものが戻ってくるわけではない。
効く場面
- デモザイクやローパスフィルターで生じた、レンズの性能とは別の全体的な甘さを補いたいとき
- 出力サイズと出力媒体(画面・インクジェット・印刷)が決まってから、その条件に合わせて最終的な締まりを出したいとき
- リサイズで縮小した後、失われたエッジの立ちを戻したいとき(専用のリサイズ後シャープニングを持つソフトもある)
つまずきやすい点
- 適用量を上げすぎて、エッジに沿った明るい線・暗い線(ハロー)が出る。これは設定ミスというより演算が必ず持つ副作用で、量ではなく半径を下げるほうが効くことが多い
- 半径を大きくすると、シャープネスというより局所コントラストの操作に近づき、縁がエッジから離れた広い範囲に出る
- 等倍未満の表示で調整してしまう。Adobe のヘルプも 100% 以上に拡大して見るよう指示している
- ぼけた写真をシャープネスで救おうとする。失われた細部は戻らず、ノイズと縁だけが目立つようになる
どこまで裏が取れているか
この項目についてよく言われることを、出典に当たって確かめた結果です。出典が見つからなかったものは、見つからなかったと書いています。
- 原典で確認できる アンシャープマスクとは、元画像にぼかしをかけた複製を作り、それを元画像から差し引くことでエッジのコントラストを上げる演算である 出典はオープンソース実装(ImageMagick)の公式ドキュメントであって、規格でも原典でもない。ただし同ページは -sharpen 演算子が「ガウスカーネルを負のスケールで畳み込む=ぼかしを元画像から引く」処理そのものであることを、再現できるコマンドとして示しており、実装が公開されているため記述と実装を突き合わせられる。同じ定義は GIMP 2.8 の公式マニュアルにも独立に書かれ、レイヤーの減算・加算で手作業再現する手順まで載っている。両方とも実際に取得して本文を確認した。 出典: ImageMagick 公式ドキュメント Examples — Convolution
- 二次資料でしか確認できていない USM はぼけで失われた細部を復元しているのではなく、エッジ周辺のコントラストを上げて「シャープに見える」ようにしている darktable のマニュアルは USM の効果を「シャープさの印象(impression of sharpness)を高める」と書いているが、これは実装者による説明文であって測定による裏づけではない。「復元ではない」ことを実験・測定で示した一次資料は見つけられなかった。ImageMagick の公式ドキュメントにも「繰り返しても半径を広げても元には戻らない」という同趣旨の記述があり、RawTherapee の公式 wiki も acutance(エッジコントラスト)という語で同じ説明をしているが、いずれも作例つきの説明で定量的な検証ではない。したがって「複数のオープンソース実装の説明が一致している」以上のことは言えない。3件とも実際に取得して本文を確認した。 出典: darktable 4.6 ユーザーマニュアル — sharpen モジュール
- 二次資料でしか確認できていない Lightroom / Camera Raw の「適用量・半径・ディテール・マスク」は Adobe のヘルプに定義があるが、Adobe 自身は「アンシャープマスクの変形」としか説明していない 出典は Adobe 公式ヘルプ。権威はあるが規格でも原典でもなく、アルゴリズムが非公開である以上「Adobe がそう説明している」以上のことは検証できないため secondary_only とした。各スライダーの効果は Adobe 自身の言葉で定義されているが、処理の中身は「a variation of Unsharp Mask(アンシャープマスクの変形)」としか書かれておらず、「ディテール」が高周波をどう扱うのか、「マスク」がどうエッジマスクを作るのかは公開されていない。本来の URL は https://helpx.adobe.com/camera-raw/using/sharpening-noise-reduction-camera-raw.html だが、本セッションの環境からは応答が得られなかった(TLS 接続は確立してリクエストも送信できるが、サーバ側が TLS 再ネゴシエーションを繰り返したまま本文を返さない。curl の2種類の TLS 実装と別経路の取得手段で計8回試行)。資料側の欠落ではなく環境側の問題なので、Internet Archive の 2020-12-25 保存版を取得して本文を確認した。 出典: Adobe Camera Raw ヘルプ「シャープとノイズ軽減」(Internet Archive 2020-12-25 保存版)
- 原典で確認できる USM は半径を大きくすると差分が負に振れ、エッジに沿って明暗の縁(ハロー)が出る この主張を established としている根拠は、GIMP というプロジェクトの権威ではなく、1つ前の主張で示した公開演算の定義から必然的に導かれることである。すなわち「元画像からぼかした複製を引く」演算では、エッジの手前側で引かれる量が元の値を上回れば差は負に振れるので、エッジに沿った暗い縁・明るい縁は演算の定義から1手で導ける。GIMP の公式マニュアルは、その導出結果(引き算の結果が負になり、明るい背景の中の星の周りに黒い輪が出る「black eye effect」が生じる)を明文で確認できる資料として引いている。プロジェクト文書そのものは一般論の原典ではない。ただし「どの半径から目に見えるハローになるか」を定量した出典は見つけられなかった。RawTherapee の wiki は低 ISO で 0.5〜0.7 という半径を勧めているが、これは推奨値であって閾値の測定ではない。 出典: GIMP 2.8 ユーザーマニュアル — アンシャープマスク
- 二次資料でしか確認できていない 「シャープネスは最後にかける」は、業界のワークフロー指針(撮影時・編集時・出力時の3段階シャープニング)に由来する慣行で、実験による裏づけは示されていない 出典は写真業界団体が作ったガイドライン(Universal Photographic Digital Imaging Guidelines v4.0)であり、規格でも査読論文でもない。シャープニングを capture / process / output の3段階に分け、出力用シャープニングを「出力前の最終工程で」と指示し、その理由を最終サイズ・鑑賞距離・出力技術への依存として説明しているが、比較実験やデータは一切示されていない。「最後にかけたほうが良い」ことを実験で示した資料は見つけられなかった(DuckDuckGo で英語の検索を行ったが、上位はすべて写真ブログ・チュートリアルで実験の報告は1件も無かった)。GIMP 2.10 のマニュアルも根拠を示さず断言しているだけで、RawTherapee はリサイズ後にかけるための専用ツールを別に用意しており、ソフト側もこの順序を絶対視していない。 出典: UPDIG Photographers Guidelines — Sharpening
他の項目の主張とあわせて確かめたい場合は根拠の強さで見るもご覧ください。
関連する現像の項目
- ノイズ除去 — 写真のノイズには、光が粒(光子)として届くこと自体から生じるショットノイズと、センサーの読み出し回路が加える読み出しノイズがある。前者は物理法則で決まり、どんなカメラでも避けられない。「ISO を上げるとノイズが増える」という言い方は、実測データを見ると少なくとも半分は誤解で、増感そのものよりも「取り込む光が少ないこと」が効いている。
- 明瞭度・かすみの除去 — 「明瞭度」も「かすみの除去」も、画面全体ではなく局所的なコントラストをいじる処理である。このトピックは、本サイトの主題がいちばんはっきり出る場所でもある。darktable の同種機能は使っているアルゴリズムが名指しで公開されているのに対し、Adobe の「明瞭度」は効果の説明しか公開されていない。同じ見た目の機能でも、根拠として確かめられる範囲は同じではない。
- 現像の順番 — 現像ソフトの処理は、利用者が操作した順ではなく、ソフトが決めた固定の順序(パイプライン)で実行される。そしてこれらの処理は数学的に可換ではないので、順序を入れ替えれば結果は変わる。一方で、雑誌や解説記事でよく見る「正しい現像手順」については、実験的な根拠を示した出典を見つけられなかった。
- デモザイク(ベイヤー配列) — センサーの各画素が測れるのは赤・緑・青のうち1色だけで、残りは周囲から推定して埋められています。この推定処理をデモザイクと呼びます。配列の設計は1976年の特許まで遡れますが、どう埋めるかのアルゴリズムは今も一つに定まっていません。
関連する構図
- 対比構図 — 性質の違う2つのものを同じ画面に入れ、その差そのものを主題にする構図。大小・明暗・新旧・粗密などが対比の軸に使われる。差が読み取れる程度に離れていることが条件とされる。