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明瞭度・かすみの除去
- ディテールと補正
- Clarity and Dehaze
- 別名: クラリティ
- 別名: ローカルコントラスト
- 別名: 局所コントラスト
- 別名: デヘイズ
「明瞭度」も「かすみの除去」も、画面全体ではなく局所的なコントラストをいじる処理である。このトピックは、本サイトの主題がいちばんはっきり出る場所でもある。darktable の同種機能は使っているアルゴリズムが名指しで公開されているのに対し、Adobe の「明瞭度」は効果の説明しか公開されていない。同じ見た目の機能でも、根拠として確かめられる範囲は同じではない。
図で見る
この操作が画像に何をするか
明瞭度もかすみの除去も、画面全体の明暗(トーンカーブ)ではなく、狭い範囲の中での明暗差を操作する。だから空全体が均一に明るくなるのではなく、雲の輪郭や岩肌の凹凸のような「中くらいの大きさの構造」が強調される。半径の大きなシャープネスと考え方は近いが、Adobe は明瞭度がどんな演算なのかを公開していないため、正確に何をしているかは利用者側から確かめられない。darktable の局所コントラストは使用アルゴリズムが公表されており、ソースコードも読める。
効く場面
- 遠景が白っぽく浮いていて、山や雲の立体感が出ないとき
- 岩・木肌・金属など、中くらいの大きさの凹凸を持つ被写体の質感を出したいとき
- 全体のコントラストを上げると白飛び・黒つぶれしてしまう画面で、明暗の幅を広げずに立体感だけを足したいとき
つまずきやすい点
- 強くかけて、山の稜線や建物の縁に沿って空が暗く(あるいは明るく)縁取られる。半径が大きいぶん、シャープネスのハローより広く目立ちにくい形で出る
- 人物に強くかけて、肌の凹凸まで強調してしまう
- かすみの除去を上げると色も濃くなるため、彩度を上げたつもりがないのに色が破綻する
- 「明瞭度は中間調のコントラスト」という説明を実装の説明として受け取る。それは Adobe のヘルプにある効果のたとえで、演算の定義ではない
どこまで裏が取れているか
この項目についてよく言われることを、出典に当たって確かめた結果です。出典が見つからなかったものは、見つからなかったと書いています。
- 二次資料でしか確認できていない 「明瞭度は中間調のコントラスト」という説明の出所は Adobe 自身のヘルプで、そこでは「大きな半径のアンシャープマスクのようなもの」と説明されている 日本語圏で流通している「明瞭度は中間調のコントラストを上げる機能」「大きな半径のアンシャープマスクのようなもの」という説明は、Adobe 公式ヘルプの一文(局所コントラストを上げて奥行きを加え、中間調に最も強く効く/大きな半径のアンシャープマスクのようなもの)がそのまま出所である。Adobe 公式ヘルプであっても secondary_only とした。ここに書かれているのは効果の言葉による説明と使い方の助言であって、アルゴリズムではない。特に「like a large-radius unsharp mask(〜のようなもの)」は比喩であり、実装がそうだとは書かれていない。この一文を「明瞭度=大半径 USM である」と読み替えるのは出典の範囲を超える。本来の URL は https://helpx.adobe.com/camera-raw/using/make-color-tonal-adjustments-camera.html だが、本セッションの環境からは応答が得られなかった(TLS 接続は確立してリクエストも送信できるが、サーバ側が TLS 再ネゴシエーションを繰り返したまま本文を返さない。curl の2種類の TLS 実装と別経路の取得手段で計8回試行)。資料側の欠落ではなく環境側の問題なので、Internet Archive の 2025-01-14 保存版を取得して本文を確認した。 出典: Adobe Camera Raw ヘルプ「カラーと階調の調整」(Internet Archive 2025-01-14 保存版)
- 裏付ける出典が見つからない Adobe は「明瞭度」が具体的にどんな演算なのかを公開していない 探した範囲は次のとおり。(1) Adobe 公式ヘルプ(Camera Raw のカラー・階調調整ページ、Internet Archive 2025-01-14 保存版)を全文取得し、Clarity についての記述は前項に引いた説明の数文のみで、演算・パラメータ・処理空間の記述が無いことを確認した。(2) Google Patents の検索 API で譲受人を Adobe に絞り、clarity / local contrast / midtone contrast を検索した。local contrast ではヘイズ除去や画像スタイル変換の特許が並び、明瞭度に対応すると特定できる特許は見つからなかった(clarity 単独の再検索は Google 側の 503 で完遂できていない)。(3) DuckDuckGo で英語で明瞭度スライダーのアルゴリズム・特許を検索したが、上位に出た米国特許 US20130022287A1「Image contrast enhancement」を実際に取得したところ譲受人は個人で Adobe とは無関係だった。以上より「Adobe が明瞭度のアルゴリズムを公開している証拠を見つけられなかった」と結論した。存在しないことの証明ではない。
- 原典で確認できる darktable の「local contrast」は、local laplacian filter か bilateral grid のどちらかを使うと公表されており、実装のソースも公開されている 公式マニュアルが使用アルゴリズム(既定は local laplacian、もう一方は正規化しない bilateral filter)を名指しし、処理する色空間(Lab の L チャンネルのみ)まで明示している。実装は src/iop/bilat.c にあり、モードの列挙を実際に取得して確認した。ただしこれは「darktable の local contrast モジュールがどう動くか」の established であって、「明瞭度とは一般にこうである」の根拠ではない。Adobe の明瞭度が同じことをしている保証はまったくない。なお local laplacian filter という手法自体は Sylvain Paris ら(当時 Adobe Systems 在籍)が SIGGRAPH 2011 で発表した論文として公開されているが、darktable のソースコード(src/common/locallaplacian.c および .h)を全文取得して確認したところ、この論文への引用は一件も無かった。また論文の第一著者が Adobe 所属であることは、Adobe の明瞭度がこの手法を使っている証拠にはならない。 出典: darktable 4.6 ユーザーマニュアル — local contrast モジュール
- 原典で確認できる darktable の「かすみの除去」は、He・Sun・Tang による Dark Channel Prior(暗チャネル事前分布)の実装であるとソースコードに明記されている ソースコードのファイル冒頭コメントに、実装した論文(Kaiming He, Jian Sun, Xiaoou Tang, "Single Image Haze Removal Using Dark Channel Prior", IEEE TPAMI vol.33 no.12, 2011, DOI: 10.1109/TPAMI.2010.168)が DOI 付きで明記されている。ソース自体が公開されているので実装と論文の対応も検証できる。これは「darktable のかすみ除去がどう動くか」の established であって、他社製品の実装の根拠ではない。元論文(CVPR 2009 版 PDF)も実際に取得し、「かすみのない屋外画像では、たいていの局所領域に少なくとも1色が極端に暗い画素が含まれる」という中心的な観察を確認した。記述が将来変わらないよう release-4.6.1 タグに固定した URL を引いている(master でも同じ記述であることを確認済み)。 出典: darktable ソースコード src/iop/hazeremoval.c(release-4.6.1)
- 原典で確認できる Adobe はヘイズ除去について、多解像度の暗チャネルを含む4種類の特徴量を使う方法で特許を取得しており、その中で He らの論文を引用している 特許は公開文書であり、記載内容(多解像度暗チャネル・多解像度局所最大コントラスト・色相のずれ・局所最大彩度という4種類の特徴量モジュール、He らの CVPR 2009 論文の引用文献欄への記載、譲受人が Adobe Systems Incorporated であること)はそのまま検証できる。ただしこれは特許に書かれている内容についての established であって、「Lightroom の『かすみの除去』がこの方法を使っている」ことの根拠ではない。特許は出願時点でこういう方法を考えていたという記録にすぎず、製品の実装とは別である。Adobe は他にもヘイズ除去関連の特許を複数持つ(US10692197B2 / US9646364B1 / US9508126B2 / US9031345B2 を確認)が、どれが製品に使われているかを述べた Adobe の公表資料は見つけられなかった。なお Google Patents のページは本文取得時(HTTP 200)に上記の記述を確認したが、後刻の再検証では Google 側の 503 で再取得できなかったため、公報 PDF(patentimages.storage.googleapis.com、全16頁)でも同一内容を確認している。 出典: 米国特許 US9305339B2「Multi-feature image haze removal」(Adobe Systems Incorporated)
他の項目の主張とあわせて確かめたい場合は根拠の強さで見るもご覧ください。
関連する現像の項目
- シャープネス — デジタルのシャープネス処理の標準はアンシャープマスク(USM)で、元画像から「ぼかした複製」を差し引いてエッジ付近のコントラストを持ち上げる線形演算である。ぼけて失われた情報を復元しているのではなく、エッジの見え方を強調しているだけなので、やりすぎるとエッジに沿って明暗の縁(ハロー)が出る。「シャープネスは最後にかける」という定石は、実験の結果ではなく業界のワークフロー指針に由来する。
- トーンカーブとガンマ — ガンマとは、光の強さと符号値のあいだの非線形な対応づけである。sRGB の伝達関数は「ガンマ 2.2」と言われるが、実際には暗部に線形区間を持つ区分関数で、式に現れる指数は 1/2.4 である。この非線形性のため、符号値の 50% は光量の 50% ではない。さらにトーンカーブを RGB の各チャンネルに独立に掛けると RGB の比率が変わるため、明るさだけでなく色相まで動く。このページの内容は規格と測定に支えられているが、色相がどれだけずれるかの定量的な一般化までは出典が無い。「S字カーブを掛けるとコントラストが上がる」という広く言われる説明そのものも、実測ではなく曲線の傾きから導かれる幾何的な帰結として扱っている。
- 彩度と自然な彩度(バイブランス) — 「彩度」という語には少なくとも3つの別々の意味がある。CIE が定義する知覚属性としての saturation、HSL/HSV の S、そして現像ソフトのスライダーである。「自然な彩度(バイブランス)」に至っては統一された定義がなく、同じ darktable の中でさえ、名前が同じで逆方向に働くモジュールが並存していた。Adobe が「低彩度の色を主に上げ、肌色の過飽和を防ぐ」と説明しているのは事実だが、そのアルゴリズムは公開されていない。一方オープンソースの実装はソースコードを読めば何をしているかが行単位で確定する。このページでいちばん確かなのは「実装ごとに動作が違う」という事実のほうで、「自然な彩度とは何か」という定義そのものには、参照できる共通の原典が存在しない。
- 現像の順番 — 現像ソフトの処理は、利用者が操作した順ではなく、ソフトが決めた固定の順序(パイプライン)で実行される。そしてこれらの処理は数学的に可換ではないので、順序を入れ替えれば結果は変わる。一方で、雑誌や解説記事でよく見る「正しい現像手順」については、実験的な根拠を示した出典を見つけられなかった。
関連する構図
- 対比構図 — 性質の違う2つのものを同じ画面に入れ、その差そのものを主題にする構図。大小・明暗・新旧・粗密などが対比の軸に使われる。差が読み取れる程度に離れていることが条件とされる。