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現像の順番
- ディテールと補正
- Processing Order
- 別名: 現像手順
- 別名: パイプライン
- 別名: ピクセルパイプ
- 別名: 非破壊編集
- 別名: パラメトリック編集
現像ソフトの処理は、利用者が操作した順ではなく、ソフトが決めた固定の順序(パイプライン)で実行される。そしてこれらの処理は数学的に可換ではないので、順序を入れ替えれば結果は変わる。一方で、雑誌や解説記事でよく見る「正しい現像手順」については、実験的な根拠を示した出典を見つけられなかった。
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この操作が画像に何をするか
現像ソフトは、利用者がスライダーを動かした順ではなく、あらかじめ決められた順序で処理を実行する。この順序には物理的に動かせない部分がある。ハイライト再構成は RAW のままのデータでないと意味がないのでデモザイクの前、デモザイクが済んでいないと入力カラープロファイルは当てられない、という具合である。そして処理は可換ではないので、同じ設定でも順序が違えば結果は違う。非破壊(パラメトリック)編集が保証するのは「元の RAW が書き換わらないこと」と「いつでもパラメータを変えられること」であって、「操作した順に処理されること」ではない。
効く場面
- 同じ設定にしたはずなのに、別のソフトと結果が違う理由を知りたいとき
- 編集履歴を戻さずに、後から前段の設定(露出やホワイトバランス)を変えたいとき
- レンズ補正やノイズ除去を外部ソフトと二重にかけないよう、どこで何が処理されるか把握したいとき
つまずきやすい点
- 編集履歴の並び=処理の順序だと思い込む。darktable のマニュアルは、履歴は「いつ何をいじったか」の記録であって実行順ではないとわざわざ注記している
- 「非破壊だから何をしても劣化しない」と考える。非破壊が守るのは元ファイルであって、パイプラインの中で起きる補間や量子化が消えるわけではない
- 解説記事の「正しい手順」を、検証された最適解として受け取る。順序が結果を変えるのは事実だが、ある順序が別の順序より良いことを実験で示した資料は見つけられなかった
- レンズ補正の内部順序を入れ替えられると考える。周辺光量落ちは無加工の画像で測定されているため、画素を動かす処理より前でなければ測定条件と合わない
どこまで裏が取れているか
この項目についてよく言われることを、出典に当たって確かめた結果です。出典が見つからなかったものは、見つからなかったと書いています。
- 原典で確認できる レンズ補正の各処理(周辺光量・色収差・歪曲)は可換ではなく、順序を変えると結果が変わる lensfun の公式マニュアルが「これらの画像操作は可換ではないので、正しい順序で適用することが重要である」と明言したうえで、その順序(周辺光量補正 → 倍率色収差補正 → 歪曲補正 → 投影方式の変更 → パースペクティブ補正 → 拡大縮小)を示し、なぜその順序でなければならないかまで説明している。理由は、周辺光量落ちが「無加工の画像」で測定されているため、画素を動かす処理より前に補正しないと測定条件と合わなくなる、というもの。lensfun はオープンソースで実装も検証できる。これは「lensfun のレンズ補正処理がどう動くか」およびその設計根拠についての established であって、現像処理一般が可換でないと言っているわけではない。なお同ページは、実装上は逆順で座標を逆算していることも説明しており、「概念上の順序」と「実装上の順序」が別であることも明記している。 出典: lensfun 公式マニュアル — Corrections
- 原典で確認できる darktable では、モジュールの実行順はユーザーインターフェイス上の並び順そのもので、並べ替えると処理結果が変わる。しかも順序を変えられない依存関係が存在する 公式マニュアルが、処理モジュールの実行順は UI 上の並び順と完全に一致すること、UI での並び替えが処理内容を変えること、そして一部のモジュールには動かせない前後関係(ハイライト再構成は RAW データ上でデモザイクの前に行う必要があり、デモザイクは入力カラープロファイルの適用より前でなければならない)があることを明示している。これは「darktable がどう動くか」の established で、他のソフトが同じ順序を採用している保証ではない。RawTherapee も同様に固定のツールチェーンを持ち、GUI のタブの並びとは別の順序で処理することを公式 wiki に明記している(実際に取得して本文を確認)。同ページによれば RawTherapee ではレンズの歪曲補正がデモザイクより前、ノイズ除去とかすみ除去はデモザイクより後に置かれており、具体的な順序はソフトによって異なる。「darktable の順序が正しい」という主張はしていない。 出典: darktable 4.6 ユーザーマニュアル — the pixelpipe & module order
- 原典で確認できる 非破壊(パラメトリック)編集の「編集履歴」は、処理される順序ではなく、操作した順序の記録である 公式マニュアルが「履歴スタックはモジュールが実行される順序を表したものではなく、変更が加えられた順序である。実行順は右パネルのモジュールの並び順で表される」とわざわざ注記している。これは「先にトーンをいじってから色をいじったから、その順に処理された」という直感がそのまま誤りであることを意味する。これは「darktable がどう動くか」の established。ただし、パラメータを保存して毎回元データから再計算する方式である以上、履歴順と実行順が別になるのはこの方式に共通の性質である。それを一般論として述べた一次資料は見つけられなかったので、主張は darktable の範囲に限定してある。なお非破壊編集が保証するのは「元の RAW ファイルが書き換わらないこと」と「いつでもパラメータを変更できること」であって「操作した順に処理されること」ではないが、この区別自体を明言した出典は、この注記以外に見つけられなかった。 出典: darktable 4.6 ユーザーマニュアル — history stack
- 裏付ける出典が見つからない 「露出 → ホワイトバランス → トーン → 色 → ディテール」といった定番の現像手順に、実験的な裏づけを示した出典は見つけられなかった 探した範囲は次のとおり。(1) DuckDuckGo で英語で「RAW 編集手順の最適な順序に関する研究・実験・エビデンス」を検索したが、上位10件はすべて分子生物学・社会調査法の「editing」に関する論文で、写真現像の順序に関するものは1件も無かった(検索語の多義性の問題もある)。(2) darktable の公式マニュアル「the pixelpipe & module order」を全文取得したが、順序について書かれているのは「最良の出力品質が得られるよう慎重に選ばれた」という開発者の説明のみで、比較や測定のデータは示されていない。(3) RawTherapee の公式 wiki「Toolchain Pipeline」も同様に、順序を列挙するだけで根拠は示していない。(4) UPDIG のガイドライン(シャープニングの節)も、順序の指示はあるが実験の記載は無い。以上より「定番手順を実験で裏づけた資料を見つけられなかった」と結論した。そのような資料が存在しないことの証明ではない。また、順序に意味があること自体は別の主張として確認できている(入れ替えると結果が変わる/一部は物理的に動かせない)。
他の項目の主張とあわせて確かめたい場合は根拠の強さで見るもご覧ください。
関連する現像の項目
- シャープネス — デジタルのシャープネス処理の標準はアンシャープマスク(USM)で、元画像から「ぼかした複製」を差し引いてエッジ付近のコントラストを持ち上げる線形演算である。ぼけて失われた情報を復元しているのではなく、エッジの見え方を強調しているだけなので、やりすぎるとエッジに沿って明暗の縁(ハロー)が出る。「シャープネスは最後にかける」という定石は、実験の結果ではなく業界のワークフロー指針に由来する。
- ノイズ除去 — 写真のノイズには、光が粒(光子)として届くこと自体から生じるショットノイズと、センサーの読み出し回路が加える読み出しノイズがある。前者は物理法則で決まり、どんなカメラでも避けられない。「ISO を上げるとノイズが増える」という言い方は、実測データを見ると少なくとも半分は誤解で、増感そのものよりも「取り込む光が少ないこと」が効いている。
- レンズ補正 — レンズ補正が扱うのは主に歪曲収差・周辺光量落ち・倍率色収差の3つで、この3つは Adobe の DNG 仕様書に数式付きで定義されている。補正データは、ソフト側のプロファイル(Adobe の LCP や lensfun のデータベース)と、RAW ファイルにメーカーが埋め込んだデータの2系統がある。歪曲補正は画素を並べ直して補間する処理なので、画素値が作り直される点は避けられない。
- デモザイク(ベイヤー配列) — センサーの各画素が測れるのは赤・緑・青のうち1色だけで、残りは周囲から推定して埋められています。この推定処理をデモザイクと呼びます。配列の設計は1976年の特許まで遡れますが、どう埋めるかのアルゴリズムは今も一つに定まっていません。
- ホワイトバランスと色温度 — 「色温度」はもともと黒体(プランク放射体)の温度を指す測色量で、CIE の定義では光源の色度が黒体と一致する場合にしか成立しない。蛍光灯・LED・昼光はいずれも黒体軌跡に乗らないため、実際に使われているのは近似量である相関色温度(CCT)のほうである。ここまでは CIE の規格定義で確認できる。一方、現像ソフトのスライダーが実際に何をしているかは、ソフトごとに公開の度合いが違う。RawTherapee と darktable は公式文書とソースコードで挙動を確定でき、値を上げると画像が暖色に転ぶこと、WB の実体が RGB チャンネルごとの乗算係数であることが読み取れる。ただしそれが「どの現像ソフトでもそうである」という一般則までは裏づけられていないため、このページの実装まわりの記述はいずれも「この2つのソフトでは」という限定つきである。
- ハイライト・シャドウの復元 — 「RAW なら白飛びも戻せる」が成り立つのは、赤・緑・青の3チャンネルが同時には飽和しないという条件のもとでだけです。3つとも飽和した領域については、オープンソースの実装自身が「復元ではなく、もっともらしく見せかける処理」だと明言しています。何段まで戻せるかを定めた規格や実装は存在しません。