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トーンカーブとガンマ
- 色の基礎
- Tone Curve and Gamma
- 別名: ガンマ
- 別名: S字カーブ
- 別名: コントラストカーブ
- 別名: 中間調
ガンマとは、光の強さと符号値のあいだの非線形な対応づけである。sRGB の伝達関数は「ガンマ 2.2」と言われるが、実際には暗部に線形区間を持つ区分関数で、式に現れる指数は 1/2.4 である。この非線形性のため、符号値の 50% は光量の 50% ではない。さらにトーンカーブを RGB の各チャンネルに独立に掛けると RGB の比率が変わるため、明るさだけでなく色相まで動く。このページの内容は規格と測定に支えられているが、色相がどれだけずれるかの定量的な一般化までは出典が無い。「S字カーブを掛けるとコントラストが上がる」という広く言われる説明そのものも、実測ではなく曲線の傾きから導かれる幾何的な帰結として扱っている。
図で見る
この操作が画像に何をするか
トーンカーブは、入力の値ごとに出力の値を決める1次元の対応表である。対角線が「何もしない」状態で、対角線より上に持ち上げた領域は明るく、下げた領域は暗くなる。効くのは持ち上げ幅そのものよりも傾きで、傾きが1より大きい区間は入力の差が拡大されてコントラストが上がり、1より小さい区間は差が圧縮されて平坦になる。S字カーブが「コントラストを上げる」と言われるのは、中間調の傾きを1より大きくする代わりに、両端の傾きを1より小さくして階調を譲っているからである。ただしこの操作は R・G・B それぞれに同じ関数を掛けるので、関数が非線形であれば RGB の比率が変わり、明るさだけでなく色相まで動く。グレーや低彩度の色ではほとんど影響がないが、高彩度の色では無視できない。
効く場面
- 全体は変えずに、中間調のコントラストだけを上げたいとき
- ハイライトの粘りを残しながら、暗部だけを締めたいとき
- 撮って出しが眠く見えるとき、どの明るさ帯を犠牲にするかを自分で決めたいとき
- 露出補正では両端が飽和してしまう場面で、帯ごとに配分を変えたいとき
つまずきやすい点
- 「中間調を持ち上げる」の中間調が、符号値の中間なのか光量の中間なのかを取り違える
- S字を強く掛けすぎて、高彩度の被写体(花・衣服)の色相が回って見える
- 端点付近を極端に寝かせ、ハイライトやシャドウの階調を潰してしまう
- コントラストを上げた結果として彩度も上がっているのに、さらに彩度スライダーを足す
どこまで裏が取れているか
この項目についてよく言われることを、出典に当たって確かめた結果です。出典が見つからなかったものは、見つからなかったと書いています。
- 原典で確認できる sRGB の伝達関数は指数 1/2.4 と暗部の線形区間からなる区分関数だが、対数軸で見たときの実効的なガンマは約 2.2 である。式に 2.2 が現れるわけではない。 白書は「式の指数に 2.4 とあるにもかかわらず、この非線形性に対応する実効ガンマは実際には約 2.2 である(実効ガンマは対数軸でプロットしたときの直線部の傾きから決まる)。これは式のオフセット項の効果による」と述べている。区分関数の式そのものは ICC の3成分色符号化レジストリ(https://registry.color.org/rgb-registry/srgb )で確認した。sRGB の定義規格 IEC 61966-2-1 本体は有償のため未確認。/出典の所在について: この記述があるのは白書の Version 2.2(22ページ)で、Kodak 自身が公開していた PDF の Internet Archive スナップショットは Version 2.1(18ページ)であり、この節を含んでいない。そのため到達できる唯一の 2.2 版である第三者ミラーを出典にしている。内容の妥当性は、(1) Kodak 版 2.1 と数値・記述が矛盾しないこと、(2) 原色・白色点が ICC の公式仕様書と完全に一致すること、(3) 1996年の W3C sRGB 提案(https://www.w3.org/Graphics/Color/sRGB.html )が sRGB を「equivalent gamma value of 2.2」と呼び、ITU-R BT.709 についても「指数は 1/2.222 だが、式の大きなオフセット 0.099 のため実際の符号化は 1/1.956 の CRT ガンマに近い」と同じ機構を説明していること、の3点で確認した。 出典: Eastman Kodak「ROMM RGB White Paper」Version 2.2 (1999-07-01) §IV (p.7)
- 原典で確認できる リニアで 18% の中間グレーは、ガンマ 2.2 の媒体上では符号値で約 45.87% になる。符号値の 50% は光量の中間ではない。 マニュアルは「ガンマ補正された媒体では実際のグレーはガンマ補正込みで計算されるので(middle-gray^(1/gamma))、中間グレー18%・ガンマ2.2 なら実際の中間グレーの目標値は45.87%になる」と、式と具体値の両方を示している。この数値はべき乗則 0.18^(1/2.2) の計算結果であり、べき乗則そのものは各色空間の規格に定義されているので、規格の定義から一意に決まる帰結をマニュアルが数値として明示したものと言える。なお同マニュアルは別の箇所で「ガンマという語は撮像分野で意味が多すぎるので使うのをやめるべきだ」とも述べている。 出典: darktable 4.6 ユーザーマニュアル「filmic rgb」
- 原典で確認できる トーンカーブを RGB の各チャンネルに独立に掛けると RGB の強度比が変わるため、色相がずれる。ニュートラルでは問題にならないが、高彩度の色や、ハイライトからシャドウへ連続する階調では無視できない大きさになる。 白書は現象・条件・影響の大小・機構をすべて述べている(「トーンスケール関数は通常非線形なので、ある色度のハイライトからシャドウへの系列を通すと色相ずれが起こりうる。ニュートラルでは問題にならず、ニュートラルに近い色では影響は最小だが、高彩度の色では有意になりうる。理由は非線形関数が RGB 強度の比を変えるからである」)。ただし測定は S 字コントラストカーブとマクベスチャート8色という限られた条件で、ずれの大きさを一般化する数値は示されていない。「S字を掛けると必ずどれだけずれる」という定量的主張には使えない。同白書は「どの原色を選んでも、すべての色で色相ずれを完全になくすことはできない」とも述べている。/出典の所在について: この Appendix A も白書の Version 2.2 にのみ含まれ、Kodak 自身が公開していた PDF の Internet Archive スナップショット(Version 2.1、18ページ)には無い。そのため到達できる唯一の 2.2 版である第三者ミラーを出典にしている。原色・白色点が ICC の公式仕様書(https://registry.color.org/rgb-registry/files/ROMMRGB.pdf )と完全に一致することは確認した。 出典: Eastman Kodak「ROMM RGB White Paper」Version 2.2 (1999-07-01) Appendix A (pp.11-12)
- 原典で確認できる display-referred(表示基準)の処理は、黒を0・白を1・中間グレーを0.5に固定したうえでトーンカーブを不可逆に適用するため、画素の輝度と彩度の関係が早い段階で失われる(多くの場合、色相ずれも伴う)。 マニュアルは、固定される値(0 / 1 / 0.5)、トーンカーブが自動かつ不可逆に適用されること、その代償(輝度と彩度の関係の早期喪失、たいてい色相ずれも伴い、ダイナミックレンジが広い場面での「いかにも HDR」な見え方の原因になること)を明記している。これは darktable が scene-referred ワークフローを採用した理由の説明であり、開発側の立場からの記述である。他の現像ソフトが display-referred のままであることの是非や、両者を比較した独立の評価は本調査では見つけていない。同マニュアルは続けて、scene-referred では黒・白・グレーの定義が無効になるためトーンカーブやレベルといった従来のツールは有用な操作方法ではなくなる、とも述べている。 出典: darktable 4.6 ユーザーマニュアル「scene-referred workflow」
他の項目の主張とあわせて確かめたい場合は根拠の強さで見るもご覧ください。
関連する現像の項目
- ヒストグラムの読み方 — ヒストグラムは「撮れた光の量」そのものではなく、何らかの処理を経た画像の統計です。カメラの表示は目安だとメーカー自身が明記しており、現像ソフトの表示も「現像後の画像」の統計だと明示されています。一方「山が中央に来るのが正解」という基準には、規格にもメーカー資料にも裏づけが見つかりませんでした。
- 露出を右に寄せる(ETTR) — ETTR という言葉を広めたのは2003年の記事で、その根拠は「最も明るい1段に全階調の半分がある」という階調数の配分でした。しかし後年の実測はこの根拠そのものを否定しています。結論(白飛びしない範囲で右に寄せる)は概ね維持されますが、理由は階調数ではなく S/N 比です。
- 色空間(sRGB / Adobe RGB / ProPhoto RGB) — 色空間は「原色3つと白色点の色度」+「伝達関数(ガンマ)」で定義される。この定義自体は規格の一次資料に数値まで書かれており、このページの数値はすべてそこから取っている。sRGB の原色はテレビ規格 ITU-R BT.709 から借りたものだが、伝達関数は BT.709 とは別の式である。Adobe RGB (1998) は線形区間を持たない単純なべき乗、ProPhoto RGB(規格名 ROMM RGB)は実在しないデバイスの色として定義される。そして Web は「プロファイルの付いていない画像・色は sRGB として扱う」と規定しているため、「Adobe RGB で書き出せばきれい」は書き出し先が Web の場合には成り立たない。曖昧さが残るのは「広色域だと何がどれだけ損なわれるか」の部分で、これは単一の研究の測定値しか見つかっていない。
- カラーグレーディングとは何か — 暗部・中間調・明部にそれぞれ別の色を乗せて画の性格を決める操作を、映像の世界ではカラーグレーディングと呼ぶ。道具立ては大きく2系統ある。ひとつは映画用カラリストが使う Lift / Gamma / Gain で、3つのトーン域を大きく重ね合わせたまま動かす。もうひとつは撮影現場と仕上げのあいだで「色の決定」を受け渡すための ASC CDL で、slope / offset / power という3つの数値だけを持つ。Lightroom / Camera Raw の「カラーグレーディング」パネルは 2020 年に旧「スプリットトーン」を置き換えたもので、シャドウ・中間調・ハイライトの3つのカラーホイールを持つ。なお「カラーコレクション(補正)とカラーグレーディング(演出)は別物」という区別は、メーカー公式文書では徹底されていない。
関連する構図
- 対比構図 — 性質の違う2つのものを同じ画面に入れ、その差そのものを主題にする構図。大小・明暗・新旧・粗密などが対比の軸に使われる。差が読み取れる程度に離れていることが条件とされる。