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カラーグレーディングとは何か
- カラーグレーディング
- Color Grading
- 別名: グレーディング
- 別名: リフト・ガンマ・ゲイン
- 別名: Lift/Gamma/Gain
- 別名: ASC CDL
- 別名: カラーコレクション
暗部・中間調・明部にそれぞれ別の色を乗せて画の性格を決める操作を、映像の世界ではカラーグレーディングと呼ぶ。道具立ては大きく2系統ある。ひとつは映画用カラリストが使う Lift / Gamma / Gain で、3つのトーン域を大きく重ね合わせたまま動かす。もうひとつは撮影現場と仕上げのあいだで「色の決定」を受け渡すための ASC CDL で、slope / offset / power という3つの数値だけを持つ。Lightroom / Camera Raw の「カラーグレーディング」パネルは 2020 年に旧「スプリットトーン」を置き換えたもので、シャドウ・中間調・ハイライトの3つのカラーホイールを持つ。なお「カラーコレクション(補正)とカラーグレーディング(演出)は別物」という区別は、メーカー公式文書では徹底されていない。
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この操作が画像に何をするか
カラーグレーディングは、画素の明るさごとに別の色を割り当てる操作である。全体の色かぶりを取る白色設定とは違い、暗いところと明るいところで別の方向へ色を振れるのが特徴で、これによって「画の性格」が決まる。映画用ソフトの Lift / Gamma / Gain は、黒側・中間・白側にゆるやかに効きが偏った3本のコントロールで、境界がないぶん調整はなめらかにつながるが、ひとつを動かすと他の帯も必ず少し動く。一方 ASC CDL は、RGB それぞれの slope(傾き)・offset(下駄)・power(べき)と全体の saturation、合計10個の数値だけで色の決定を表す規格で、機材や施設が変わっても同じ結果を再現することを優先している。Lightroom / Camera Raw のカラーグレーディングパネルは、シャドウ・中間調・ハイライト・グローバルの4つのホイールと、帯どうしの重なりを決める Blending スライダーで同じことをする。
効く場面
- 露出も白色設定も合っているのに、画全体の印象がもう一歩決まらないとき
- 暗部と明部で色の方向を変えて、奥行きや時間帯の感じを作りたいとき
- 同じ現場で撮った複数カットの見えを、共通の数値で揃えたいとき
- 現場のモニタと仕上げの見えを一致させるため、色の決定を数値として持ち回りたいとき
つまずきやすい点
- Lift / Gamma / Gain を「暗部だけ」「明部だけ」を切り分ける道具だと思い、ひとつ動かすたびに他の帯も動くことに気づかない
- ASC CDL の slope を Gain、offset を Lift と一対一で読み替えてしまう(仕様は slope を「gain に似ている」としか書いていない)
- 白色設定でやるべき色かぶりの補正を、グレーディングの色乗せで打ち消そうとする
- 「まず補正、次にグレーディング」という工程の区別を、用語として厳密なものだと思い込む
どこまで裏が取れているか
この項目についてよく言われることを、出典に当たって確かめた結果です。出典が見つからなかったものは、見つからなかったと書いています。
- 原典で確認できる DaVinci Resolve の Lift / Gamma / Gain は、互いに大きく重なり合う3つの明度域を制御する。境界で切り分けているのではない。 マニュアルは Lift の効きが黒から始まって白でゼロになること、Gamma が中間調で最大になること、Gain が Lift の逆であることを述べ、続けて「これらのトーン域は非常に広く重なり合っているので、とても柔らかく自然な調整ができる」と重複が意図的な設計であることを明記している。Blackmagic Design の公式リファレンスマニュアル(無償公開PDF、v21、4444ページ)で、これは DaVinci Resolve という製品の挙動についての一次資料であって、「Lift/Gamma/Gain 一般はこう定義される」の一次資料ではない。同名のコントロールを持つ他ソフトが同じ演算をしている保証はない。マニュアルは各トーン域を数式では与えておらず、図と言葉での説明にとどまる。 出典: Blackmagic Design「DaVinci Resolve 21 Reference Manual」p.3203
- 原典で確認できる ASC CDL の SOP 演算は out = CLAMP(in × slope + offset)^power であり、続く彩度は Rec.709 の輝度係数(0.2126 / 0.7152 / 0.0722)で求めた luma を基準に伸縮させる。 出典は Academy(AMPAS)の CLF 仕様であって、ASC 自身が発行した CDL 仕様書そのものではない。ただし CLF 仕様は References 節に「ASC-CDL Release 1.2, Joshua Pines and David Reisner, 2009-05-04」を規範参照として挙げ、本文でも「ASC CDL 仕様バージョン1.2 の演算を実装したものである」と述べている。ASC-CDL Release 1.2 の原本PDFは無償公開されておらず、今回取得できなかった(検索でヒットしたのは二次解説と、演算式を含まない Sony BVM-E 用ユーザーガイドのみ)。またクランプの有無には実装差があり、CLF 仕様自身がクランプしない style を「その方式を取る多数のアプリケーションとの互換のため」として定義している。 出典: Academy of Motion Picture Arts and Sciences「Common LUT Format (CLF) Specification」ASC_CDL ProcessNode
- 原典で確認できる ASC CDL の slope は gain に似ているが、「offset が決めた黒レベルを動かさずに傾きを変える」ものとして定義されている。Lift / Gamma / Gain と一対一に対応するとは書かれていない。 仕様の定義文は、slope を「gain に似ているが、offset が確立した黒レベルをずらすことなく伝達関数の傾きを変える」、offset を「傾きを保ったまま伝達関数を上下させて全体の明るさを上げ下げする」、power を「伝達関数の中間の形を変える」としている。「similar to gain」という慎重な言い方にとどまっており、Lift / Gamma / Gain との対応関係は述べられていない。実際 Lift と offset は挙動が異なり、DaVinci Resolve の公式マニュアル p.3204 は Offset を「全チャンネルをまとめて上下させる画全体の明るさ調整(setup と呼ばれることもある)」と説明している。 出典: Academy of Motion Picture Arts and Sciences「Common LUT Format (CLF) Specification」SOPNode の要素定義
- 原典で確認できる Lightroom / Camera Raw の「カラーグレーディング」パネルは 2020 年に旧「スプリットトーン」を置き換えたもので、中間調ホイール・グローバルホイール・Blending スライダー・輝度スライダーが加わった。 記事は「スプリットトーンは無くなり、カラーグレーディングに置き換わった。カラーグレーディングは旧スプリットトーンと100%互換で、その拡張である」と明言し、追加されたコントロールとして色相環・中間調・Blending・輝度・グローバルを挙げている。Color Grading 機能のリード開発者本人による Adobe 公式ブログ記事で、Adobe 製品の仕様についての一次資料。対象は Camera Raw / Lightroom / Lightroom Classic / モバイルで、他社ソフトの「カラーグレーディング」機能とは無関係。なお日本語版を含む helpx の同等ページ(helpx.adobe.com/lightroom-classic/help/color-grading.html)は現在 404 で存在しない。 出典: Adobe Blog「Introducing Color Grading」(From the ACR Team, 2020-10-20)
- 出典によって食い違う 「カラーコレクション(補正)とカラーグレーディング(演出)は別の工程である」という区別は、メーカー公式文書のあいだで一貫していない。 Blackmagic は同じ工程を指して「この、カラーコレクションあるいはカラーグレーディングと呼ぶ処理」と両語を併記し、同義に扱っている。Adobe の Premiere 公式ヘルプ(https://helpx.adobe.com/premiere/desktop/correct-color/color-correction-fundamentals/about-color-grading.html )も両語を並べるだけで境界を定義していない。一方で Lumetri パネルは「Basic Correction」と「Creative」に分かれており、同じベンダーの中でも用語の扱いが揺れている。「補正=技術的な帳尻合わせ、グレーディング=演出的な味付け」という定義を規範として定めた規格・一次資料は見つけられなかった(探した範囲: Academy の CLF 仕様の Terms and Definitions 節、ASC CDL を参照する各社ドキュメント、Blackmagic 公式マニュアル、Adobe Premiere / Lightroom 公式ヘルプ)。この区別を明快に述べているのは書籍・ブログなどの二次資料である。 出典: Blackmagic Design「DaVinci Resolve 21 Reference Manual」p.3085
他の項目の主張とあわせて確かめたい場合は根拠の強さで見るもご覧ください。
関連する現像の項目
- スプリットトーン(調色) — 暗部と明部に別々の色を与える操作は、デジタル以前の暗室では化学反応そのものだった。銀の粒子を別の化合物に置き換えることで像の色が変わる。セピアは硫化銀、青は鉄由来のプルシアンブルーである。デジタルのスプリットトーンは、この見た目を「画素の明るさに応じて色を乗せる」というまったく別の原理で近似したものである。Lightroom では 2020 年に「スプリットトーン」が「カラーグレーディング」へ吸収されたが、旧設定は Blending を 100 にすれば同一の結果として再現できる。
- ティール&オレンジ — 暗部に青緑(ティール)、明部にオレンジを置く配色は、2000年代以降の商業映画の定番として語られる。「肌の色がオレンジで、その補色が青緑だから肌が浮き立つ」という説明がほぼ必ず添えられる。このうち検証できるのは、肌の色が測色的にどこにあるかという部分だけである。「だから美しく見える」の部分は、色の組み合わせの好ましさを扱った心理物理実験に照らすと単純ではなく、むしろ素朴な補色調和説とは逆向きの結果がある。起源についての通説(デジタル・インターミディエイト以降に広まった、最初はこの作品)は、裏付けとなる一次資料を見つけられなかった。
- LUT(ルックアップテーブル) — LUT は「この入力色をこの出力色にする」という対応表である。3D LUT は RGB 空間に格子点を置き、格子点の間の色は補間で埋める。写真・映像でもっとも普及している .cube 形式は Adobe が仕様書を公開しており、格子点数・データの並び順・入力域の既定値まで定めている。LUT は本来、Log で記録された素材を表示用に正規化するために使われてきた道具であり、「当てれば映画の色になる」フィルターとは成り立ちが違う。
- トーンカーブとガンマ — ガンマとは、光の強さと符号値のあいだの非線形な対応づけである。sRGB の伝達関数は「ガンマ 2.2」と言われるが、実際には暗部に線形区間を持つ区分関数で、式に現れる指数は 1/2.4 である。この非線形性のため、符号値の 50% は光量の 50% ではない。さらにトーンカーブを RGB の各チャンネルに独立に掛けると RGB の比率が変わるため、明るさだけでなく色相まで動く。このページの内容は規格と測定に支えられているが、色相がどれだけずれるかの定量的な一般化までは出典が無い。「S字カーブを掛けるとコントラストが上がる」という広く言われる説明そのものも、実測ではなく曲線の傾きから導かれる幾何的な帰結として扱っている。
- ホワイトバランスと色温度 — 「色温度」はもともと黒体(プランク放射体)の温度を指す測色量で、CIE の定義では光源の色度が黒体と一致する場合にしか成立しない。蛍光灯・LED・昼光はいずれも黒体軌跡に乗らないため、実際に使われているのは近似量である相関色温度(CCT)のほうである。ここまでは CIE の規格定義で確認できる。一方、現像ソフトのスライダーが実際に何をしているかは、ソフトごとに公開の度合いが違う。RawTherapee と darktable は公式文書とソースコードで挙動を確定でき、値を上げると画像が暖色に転ぶこと、WB の実体が RGB チャンネルごとの乗算係数であることが読み取れる。ただしそれが「どの現像ソフトでもそうである」という一般則までは裏づけられていないため、このページの実装まわりの記述はいずれも「この2つのソフトでは」という限定つきである。
関連する構図
- 対比構図 — 性質の違う2つのものを同じ画面に入れ、その差そのものを主題にする構図。大小・明暗・新旧・粗密などが対比の軸に使われる。差が読み取れる程度に離れていることが条件とされる。